以前は、嫁入り道具のひとつとして「婚礼布団」があったことをご存知でしょうか?
お客さま用の布団や座布団などが一式になっていて、100万円以上することも珍しくない高級品だったそうです。
現在、「布団」を頻繁に買い替える人は少ないと思います。
そんな中、
- 街の布団屋さんはどのようにして成り立っているのでしょうか?
- 布団屋さんのお仕事とは?
その疑問を解決すべく今回は、阪急茨木商店街にある「キムラ寝具店」の代表 木邑直樹さんにお話を伺ってきました。
実は木邑さん、阪急茨木商店街の理事長でもあるのです。
■Instagram:
https://www.instagram.com/kimurashinguten/
■営業時間 平日(10:00~18:00) *定休日:日曜日・不定で水曜日
■電話番号:072-622-2318
■住所:〒567-0817 茨木市別院町 1-3 茨木阪急本通商店街
いつ頃から寝具店として営業されているのですか?
そうですね、もう100年ほどになります。
曾祖父の時代から寝具に関わる仕事をしていたようです。
なので、私は詳しくいえば三代目です。
祖父のときに、寝具の業界で有名な西川チェーン店に加わり、寝具店としてやっていました。
昔はお披露目するようなお布団が主やったんですよね。
ですが、時代の移り変わりで自分たちの好きな形、自分たちの好きなスタイルの寝具を求めるようになってきました。
私の代になり、思い切ってチェーン店を脱退して、自分の道をというか自分のやりたい方向に変えて寝具店を続けているのです。
西川寝具の商品は、一部を除き、今もお取り扱いしています。
お店を継ぐことを意識したのはいつ頃ですか?
大学卒業後、通信教育で教師の道を考えたこともありますが、立地もいいし、今までのお客さんとのお付き合いもあるので、スパッと方向転換して、祖父が築いていた寝具店を継ごうかなと思ったんです。
祖父が今まで築いてきたというのもあるので、最初は適当というたら怒られますけど、流されるままにやってたんです。
でもだんだんとこれでほんとにいいのかな?って思ってきて。
ある日お客さんに、
「お兄ちゃんこのお布団ってどうやって作るんかな?中身どんな綿が入ってるんかな?」
と質問されたんですね。
綿花の手作りのお布団だったんですが、その時に僕、そんなん全然答えられなかったんです。
そしたらお客さんに「あんた布団屋やのに、中身にどんな綿が入ってるのかもわからんのかいな」
と言われて、それがすごく恥ずかしかったのを今でも覚えています。
人生を変えた蒲団学校
いろんな人に「布団の作り方を教えてください」と聞いたり、商品を取引している会社に相談したら、東京に蒲団学校という学校があるから一回連絡してあげようか?と。
その人も蒲団学校(※)を卒業されてました。
日本にそんな学校があるなんて、まったく知りませんでした。
※蒲団学校とは
職業訓練法に基づいて設立された、東京都板橋区にあるふとん屋さんの職業訓練学校。
1年間、布団を作れることはもとより、ロールプレイイング・マーケットリサーチ・マーチャンダイジングなどを毎日勉強し、寝具店経営者の卵となって卒業します。
当初は、1週間くらいの研修をしたらそれで済むのかと思っていたのですが、聞いたらなんと1年間!
当時は家内とも結婚していて、1歳になる子供もいたのでどうしようかと迷いましたが、その時すでに30歳くらいになってたので、今行かなければきっと無理やろうなと思い入学を決意しました。
東京に行き、当時はひとりで学校の寄宿に入ってたんです。
東京行く前は、針に糸を通すのもなかなか出来ないようなレベルやったんですけど、
普段の生活の規律から教わった厳しい学校でした。東京蒲団技術学院に出会えたおかげで、人に見せられる布団を作れるようになっていきました。
国家資格の寝具製作1級技能士
ご夫婦揃って寝具製作1級技能士という資格をお持ちだということですが、どのような資格なんですか?
寝具製作技能士とは、製作に必要な検反、検尺、裁断、裁縫、綿入れ、仕上げの技能を認定する国家資格です。
1級の技能試験では、かいまき(夜着)を作るのですが、生地を採寸するところからスタートしてミシンで縫製、そのあと綿を入れる…という工程を、6時間で仕上げないとダメなんです。
かいまきは実際には店頭に並んで売っていることはあんまりないんですけど、かいまきを作る工程の中にミシン縫製の細かいところ、生地の縫い合わせ、綿の入れ方など、オールマイティの技術がそこに含まれているのです。
その資格を、ご夫婦ともにもっておられるのがすごいですね。
家内は、同じ布団業界の知り合いなどに教わりながら、一級を取得しました。
寝具店というものは、昔やったら商品を仕入れてそれをそのままお客さんに売って…だったんですが、今はネットが主流になっているので価格では勝てないんですね。
なので違うところでサービスを生み出さないと、難しい時代になってきました。
自分で布団を作れる技術を身につけたということは、強みになりました。
人は、1日7、8時間寝ると言われています。一生で80年生きるとして3分の1は睡眠です。
就寝時間も快適に過ごすことが大切だと、年を重ねるごとに思うようになりました。
その辺の雑魚寝でいいやんって思ってましたけど、体にも負担がかかるようになってくるし、やっぱり寝具って大事と思います。だから昔の人は大事にされていたのですね。
キムラ寝具店はずっと商店街に?
最初は田中町の実家の場所で、『田中の綿屋』の名称で工場を営んでいたようです。
その後、今のこの場所に移転したんです。
ここの商店街もだいぶ変わりましたよね。私が小さい頃は、東映の小さな映画館がありました。
小学生の頃、校門でアニメの券を配っていて…週末になると連れていってもらってた記憶があります。
あの映画館で、「茨木にお越しの際は、キムラ寝具店へどうぞ」という、コマーシャルを出していたんですよ。
あそこの映画館好きやったんですけどね。
商店街の理事長として
木邑さんは商店街の理事長という肩書きもお持ちですが、理事長になられてどれくらいですか?
令和元年より前理事長より引き継ぎましたので、今年(2023年)で5年目になります。
近くに茨木神社があるでしょ?
この商店街は茨木神社に見てもらっているんやなと僕は思っていて。商店街という大きな屋根(アーケード)の下で、皆で手をつないで商売するような。
それが商店街で店を構えるということの、最大の良さだと思ってるんです。
今のまま、古き良き、いいお店の雰囲気は残しつつ、次の世代にバトンタッチできたらと思っています。
今後について
商店街ならではの良さをもっと出せていければと思います。
自分のところだけで商売しててもうまくいかない。
お互いに助け合って、支え合って、それが商店街の良い所だと思うんですよね。繋がりって本当に大事ですよね。
それも踏まえてですが、様々な分野での「職人さん」の技や話を体験でき、知らない世界を知ってもらえたりだとか、興味の入口にしてもらえるイベントなんかも開催していければと思っています。
インタビュアーから見た木邑さん:裏話
「老舗寝具店の代表」かつ「阪急茨木商店街の理事長」。
一度ご挨拶はさせていただいていましたが、じっくりお話しさせていただいたことはなく、「どんな方なんだろう?」取材の日を楽しみにしていました
お話ししてみて、物腰も柔らかく、とても熱い想いを持った本当に素敵な方だと知り、大好きになりました!
奥様とも仲が良く、インタビュー中も色んなエピソードを聞かせていただきました。
仲の良さが垣間見れるInstagramでの投稿を密かに楽しませてもらっています。
後日、お写真を撮りにいかせていただいた時には、貴重なお品物や昔のお写真を見せていただきました。
木邑さん、今回はありがとうございました^^!
まとめ
人生の約1/3は睡眠時間だと言われています。
大切な睡眠に欠かせない布団のプロフェッショナルご夫婦の営む「キムラ寝具店」さんに、是非足を運んでみてくださいね。
■Instagram:
https://www.instagram.com/kimurashinguten/
■営業時間 平日(10:00~18:00) *定休日:日曜日・不定で水曜日
■電話番号:072-622-2318
■住所:〒567-0817 茨木市別院町 1-3 茨木阪急本通商店街